伝統を受け継ぐ、ということ

ようこそ「Studio die Sonne」へ

快適空間コンサルタントの山内陽子です。

 

私は、「道」と名のつく習い事で、まともに出来る物が1つもありません。

書道は学校の授業くらいだし、華道はちょっと齧った程度、剣道は父にコテンパンに叩きのめされて終わったし、柔道・合気道・弓道は未経験。

 

これまたちっとも出来ませんが、今日は茶道のお話。

 

結婚してから、一時、義母にすすめられてお稽古をつけていただいてました、

というのも恥ずかしいほどわずかの間。

身内に表千家のM先生がいます。

M先生は、義母の遠縁の親戚らしく、義母にとっては姉妹同様だそう。

一通りのお道具が主人の実家に置かれて、叔母たちと集まったところに M先生が通って下さってのお稽古でした。

M先生は仏様をそのままのような穏やかな優しいお人柄で、お会いするのは毎回楽しみでした。

 

でも、そのうちあちこちへの引っ越しにより、私はろくに覚えないままお稽古から脱落。

やっぱり何をやってもダメだわ〜という感じ。

 

それから時を経て義母は他界し、M先生もご病気のためにお稽古が困難になりました。

長い間、主人の実家の押し入れにお道具たちは眠る事になったのですが、最近、それらのお道具を

私と娘で引き継ぐ事になりました。

 

私ときたら、よくもまあ、というほど忘れてしまったし、

娘は茶道部だけど裏千家。

それでも、お道具を活かしたい思いが皆で重なって、引き継ぎました。

 

この前の休暇に、娘がお茶を点ててくれ、ひどく久しぶりにお湯の

シュンシュン沸く音や、コトリという柄杓の音を感じ味わいました。

 

偶然とは驚くべきものです。

今日、これにさらに不思議な出会いが重なりました。

 

私の母の友人のママ、という、とっても遠いご縁の女性から、彼女の持ち物である

茶道のお道具を引き継がせて頂く事になりました。お道具は全て表千家のものだそう。

 

お道具の持ち主は、103歳のおばあちゃま。

 

自らのご意志で身の回りを片づけ、数年前に高齢者住宅での新生活をスタートされた方。

私は直接面識はないのですけれど、100歳になられた3年前、日本の伝統文化を、と、

娘のためにお手作りのお手玉をプレゼントして下さった事もあります。

今も毎日、欠かさず新聞を読んだり、本を読むのが大好きという元気で知的なおばあちゃま。

こういう風に年を重ねたいという理想です。

 

その方と娘さんである母の友人のお考えで、他に引き取り手もないので、お茶に興味のある

(こんなに遠いご縁なのに)私たちにぜひ、譲りたいとおっしゃって下さったのです。

大変有り難いお話にお礼の言葉を探している間に...行動の速い事といったら!!

お道具は母の友人から母に渡され、明後日には手元に届く事と

なりました。ちょっと緊張します・・・

 

偶然すぎる偶然が重なって、お二方のお道具を合わせて私たちが

受け継がせて頂く事になりましたが、私も娘も堂々と引き継げるような茶人では

ありません。それでも、それも解った上での寛容な経緯。

本当に素晴らしいM先生とおばあちゃまのお二人。

お道具だけでも私には身に余ることですが、そんな素晴らしいお二人の想いも大切に

受け継ぎたいと心を引き締めたところです。

 

もちろん、これに恥じぬよう、今からでも、どうにかもう一度ちゃんと茶道を学びたいと思いますが、

こうして技術やお道具を継承しながら文化は時代を超えてきたのだろうなと

しみじみと感じ、私のところで時代をとめてはいけないと思う、

特別な経験となりました。